団地の中から

人間の“場所”について考えるブログです

団地#05 古市東団地

OsakaMetroの今里筋線・新森古市駅からだいたい7分くらい歩くと、市営住宅やUR都市機構の団地が固まったエリアが見えてきた。

1956年に竣工した古市中団地は、設計は久米設計によるもので、それまでの日本にノウハウのなかった“団地の設計"という課題に対し、ひとつの最適解を見出した団地だ。

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今は当時の建物は残っていない。

「古市中団地」から「古市東住宅」へと名称も変わり、デザインを新たにして建て替えがすすめられたのだけど、実はこの建て替え後の古市東住宅がすごく良い。この団地が見たくて暑い中歩いてきた。

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日差しを受けて現れる陰影が、この団地の表情を際立たせている。

あまり詳しくないので迂闊なことは書けないが、ふと増田友也の作風を思いだした。

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凸凹凸凹…

中庭に入ってみた。

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 ずらした住棟配置により空間の性質を操ろうという試みは、千里・泉北と、大阪ではどのニュータウンにも多く見かけるが、その萌芽こそがかつての古市中団地だったようだ。

 その試みに合わせるように、周囲の民間マンションも軸を振って、仲良く並んでいるのがわかる。

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パッと見でいったいどこからどこまでが一戸なのかわかりにくいが、実は上から下を貫く壁を挟んだ凹凸のバルコニーで一戸っぽい。団地のソリッド感を強調しつつ、かつうまくハズしていて面白い。

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共用部分もすごい。手摺の軽やかさと、パンチングメタルから覗く階段の横顔、少し影のさす向こうに抜けたところに空。

 もしかすると語弊があるかもしれないけど、住棟のひとつひとつを歩きながら眺めていると、団地の公園の遊具の延長線上のような感覚がした。僕の幼い頃の団地と思い出がラップする。

 団地は決して名建築だともてはやされたり、歴史的・文化的な文脈で語られて欲しくない。できれば、そっと置かれた構造物であってほしい。その価値はそこで生きる僕たちが決めるのだから。

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円卓。

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高層になると迫力がます。

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ゆったりカーブを描く道路。ここは住民の車のアプローチによく使われている。

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集会所がちょこん。
良い団地だった。