団地の中から

人間の“場所”について考えるブログです

団地#07 大阪市営加島団地

 (2018年8月訪問)

 少し坂になった道を、ペダルを漕ぐたびに尻のポケットに入れた財布が食い込んだ。ひと漕ぎ、ひと漕ぎすると、額から汗がふきでるのがわかった。

 頭上はうらめしいくらいに青だった。かすかな日陰をつなぎながら大阪市淀川区加島を訪れた。

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 三津屋中央公園の前に地域地図があった。これを見るとわかるように、このあたりは工場が多く立ち並んでいる。中でも金属加工業が多く、大阪市内でありながらも古くからの職住近接地域だといえる。

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 三津屋中央公園を南へ曲がると、加島の団地群が見えてきた。

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 補修が進められているのか、団地の外観は美しかった。

遊具が少し傷んでいた。子供の数が減ってきているのかもしれない。この辺りをうろついていると、デイサービスの送迎車を見かけた。静かに落ち着いた団地もいいが、やはり子供の姿があると団地はわっと賑わいだす。

 野菜の移動販売のおじさんと、住民のおばあさんたちが日陰で談笑していた。

 


 まとわりつく熱気、静かな団地、蝉と遠くの電車の音。どこか別世界に入り込んだようだった。唯一現実感を持っているのは自分の体だけのような気がして、それでも団地の間を縫うように自転車を漕いでいると、どこかの角で曲がりきれずに体すら振り落としてしまいそうで。

 この住戸のひとつひとつに、誰かの人生がしまわれている。本当は人生なんてきれいに整理整頓できるものじゃないけど、団地はすっぽりと飲み込んでいる。自分はそこからはじき出されたのだろうか。団地の中が本当の世界なんだろうか。太陽は真上にいる。茫然とするほど青い。今いる場所はどこなのか、ぐるぐると自転車で回っているうちに、見失っていった。

 時折見かける住人の姿が、僕を正気に繋ぎとめていた。

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 大きな高層団地がいくつもある。少し青みがかった外壁も、夏の青さに劣らず美しい。

この写真を見るとよくわかるけど、一部分が下から上までズドンと吹き抜けていて、中庭のようになっている。

こういう団地をみると、この中庭に面した部屋の中にいる自分を想像してしまう。直射日光ではないやわらかな光が、中庭をとおって部屋の中へ入ってくるようすを思い浮かべると、心から落ち着く。

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